研究概要 |
修復物の歯周疾患への影響については,充分な調査が行われてきたはは言い難い。特に修復物のマージンについては形態はもちろんのことその位置についても検討する必要がある。そこで今回我々は,歯肉縁下にマージンが設定されている修復物(縁下修復物)と歯周疾患との関連を検討した。調査は新潟大学歯学部附属病院予防歯科外来の患者170名を対象に,基本属性(年齢,性別など),歯面単位の修復物および歯周組織の診査結果,口腔衛生習慣などのアンケート情報を用い,歯面単位で分析を行った。その結果,歯肉縁下にマージンが設定されている修復物が存在している歯面では,歯肉縁上にマージンが設定されている歯面および健全歯面(非修復歯面)に比べて,プロービング時の歯肉出血がある【BOP(+)】割合と,ポケット深さ(PD)が4mm以上である割合が有意に高かった(クロス集計およびχ2検定)。種々の関連項目をコントロールした分析においても,BOP(+)と4mm以上のPDを有意に存在させた(ロジスティック回帰分析)。この結果より,縁下修復物は,歯周疾患のリスク要因である可能性が推測された。また,本調査の対象者の多くは定期的な予防ケアーを受けており,これらの者においても歯肉縁下に修復物の存在する歯面のコントロールは容易でないことが示された。今後,修復処置を行う場合は,マージンを歯肉縁下に設定することを可及的に避けることはもちろんのことであるが,修復のほとんどの原因であるう蝕を予防することが歯周疾患予防にもなるとの認識が重要である。
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