研究概要 |
薬物誘発性歯肉肥大における線維芽細胞の増殖とカルシウムに対する反応に関する研究は,以下の二つの実験を企画し行ってきた. 1. in vivo実験:我々が確立した方法に従って15日齢Fischerラットにフェニトイン,シクロスポリンあるいはニフェジピン含有粉末飼料(CE-2)を与え,25から55日間飼育した.投与開始から7日間は低濃度で,その後2mg/g,50mg/gあるいは200mg/gの濃度で薬物を与える. 投与終了時にラット下顎を摘出し歯肉肥大の程度を測定した.さらにシクロスポリンとCa拮抗薬の相互作用についても検討した.単独あるいは複合薬物投与による歯肉肥大の程度と血中薬物濃度との関係を調べた. その結果,シクロスポリン投与によって歯肉肥大は濃度依存性に発現していた.カルシウム拮抗薬のニフェジピンあるいはジルチアゼムをシクロスポリンと同時に投与すると,いずれの薬物の血中濃度も単独投与に比べて低下していたが,歯肉肥大の程度は単独投与のものを加算した様態で増強されていた. 2. in vitro実験:ヒト歯肉組織から線維芽細胞を分離,増殖し5-8代の細胞を使用した.コンフルエントの培養線維芽細胞にカルシウム拮抗薬(ニフェジビン2mg/ml)を添加し,トリパンブルーによる細胞死,アポトーシスの判定および細胞の^3Hチミジンの取り込みを調べた. その結果,ニフェジピン添加により細胞死は減少し,アポトーシスは濃度依存性に抑制され,低カルシウム培地の^3Hチミジンの取り込みは低下し,高カルシウム培地の^3Hチミジンの取り込みは増加していた.このことから,カルシウム拮抗薬は歯肉線維芽細胞の増殖過程で細胞死を抑制し,それには細胞内カルシウム動態の関与が示唆された.
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