研究概要 |
1.in vivo歯肉肥大誘発実験:Fischerラットにシクロスポリン(CsAと略:50-300μg/g),ニフェジピン(NF:200-800μg/g)あるいはジルチアゼム(DIL:600-6000μg/g)含有の粉末飼料を与え40日間飼育した.また,薬物複合投与の影響をみるためCsAと二種類のCa拮抗薬を複合投与して,歯肉肥大の程度と血圧の変動,血中薬物濃度との関係を調べた. その結果,CsAが最も顕著な歯肉肥大を誘発し,次いでNF,DILの順であった.CsAとCa拮抗薬との併用投与においては,いずれも歯肉肥大の程度は重症化していた.これらはどの組み合わせてみても,単独投与群の肥大を加算した(相加的)効果と考えられた. 2.臨床的観察:最新のCa拮抗薬アムロジピン(AML)服用者の歯周組織の変化を臨床的に検索した.その結果,AMLの服用によって薬物誘発性歯肉肥大が生じ,それが服用中止により軽減し,再服用によって再発することがわかった.しかし再発性歯肉肥大は,プラークコントロールと歯周初期治療によって症状を軽減できることがわかった. 3.in vitro実験:ヒト歯肉線維芽細胞を使用した.歯肉線維芽細胞の増殖とアポトーシスは,培養液にNF(1.5μM)を添加することにより抑制された.アポトーシスのほうが,薬物の影響を強く受けていた.歯肉組織リモデリングの変調が歯肉肥大発生の一因であること,さらにCa拮抗薬はマクロファージ様細胞RAW364のLPS刺激による誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の誘導を阻害して,細胞死を抑制することから,炎症による組織傷害に対して防御作用のあることが示された.
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