研究概要 |
ダウン症候群(DS)では早期に重篤な歯周疾患の発症することが知られている.しかし,本症候群に特徴的な歯周疾患と歯周病原性菌の特異性との関係については,これまで十分な検討はなされていない.本年度はDSとDS以外の精神発達遅滞者(MR)の歯肉縁下プラーク中より,PCR法を用いて,歯周病原性菌を検出し,両者間の細菌学的な異同および歯周炎症症状との関連について検討した. 成人DS(14歳-57歳)およびAge-matched controlとして成人精神発達遅延者(MR)より縁下プラークを採取し,それから細菌の全DNAを抽出し,10種の歯周病原性菌に特異的なプライマーを用いたPCR法によりプラーク中の細菌種を同定した. DS群,MR群ともに検索したすべての歯周病原性菌が高頻度で検出されたが,両群の間に細菌の検出傾向には明確な差はみられなかった.MR群では検出細菌種と歯周炎症状態に関連性が認められなかったが,DS群においては歯周炎症状態とPorphyromonas gingivalisの存在に密接な関係が認められた.また,両群ともに歯周ポケット深さとII型線毛遺伝子を有するP.gingivalisの分布の間に強い相関が認められた. 以上の結果より,DS者の歯周組織はP.gingivalidに対して高い感受性を有していると考えられ,DS者の歯周疾患の発症に関与している事が示唆された.
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