研究概要 |
開咬の発症には頭位と下顎位,舌の位置関係が大きく関与している可能性があり,開咬症例の診断や治療予後の予測には頭位,下顎位,舌の位置異常を同定する必要がある.平成10年度において,時分割式磁気センサは300mmX300mmX300mm空間内で十分な精度を有することがわかった.しかし,頭位と下顎位を計測する場合には,この空間の範囲では不十分なことが判明したので,600mmX600mmX600mmまで測定空間を拡大した場合の精度を求めた.このセンサは交流磁場を利用しているため,磁界発生源からセンサまでの距離が増加すれば,得られる信号のS/N比が低下して精度の低下が予測できる.平成11年度では,磁界発生源から磁気センサまでの距離に対するデータ変動について検討を行った. 6自由度磁気センサシステムからのデータは,RS-232Cを介してパーソナルコンピュータで取り込み,データ集録解析ソフト(LabVIEW 5.l National Instruments)で解析を行った.トランスミッタからレシーバまでの距離がデータ変動に与える影響を検討するために,トランスミッタの原点からレシーバまでのX軸の距離を100,200,300,400,500,600,700,800mmに設定した.それぞれの位置に対して,位置情報(x,y,z)と角度情報(azimuth,elevation,roll)のデータ数1200についてサンプリングを行い,データの変動値を求めた. 結果は以下のとおりであった. 1)位置データ・角度データは,トランスミッタからレシーバまでの距離が離れるにしたがって変動が大きくなる傾向が認められ,600mm以上の位置でさらに変動が大きくなった. 2)トランスミッタからレシーバまでの距離が400mm以内では,X,Y,Zの1S.D.は±0.02mm以下,azimuth,elevation,rollの1S.D.は±0.005°以下であり,頭位と下顎運動の3次元計測に有効な精度を有していた. 3)600mm以上の位置では変動が大きいために,頭位と下顎運動計測に必要な精度が得られなかった.
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