研究概要 |
目的:顎運動は,顔面骨格や筋,咬合の形態に影響を受けるとされているが,逆に顎運動の特性は歯列弓形態の発育に影響を及ぼすと考えられる.そこで本研究では,幼児期から成人までのヒトを対象に,各年齢群での顎運動機能の発達の過程,及び歯列弓形態の推移を調べ,さらに両者の相互関連を明らかにすることを目的とした. 対象と方法:幼稚園児(K群),小学5年生(P群),中学2年生(J群),高校2年生(H群),大学生(U群)各50名から選出したSkeletalI級の正常咬合者で明らかな顎機能異常のない者各7名について,ガム咀嚼時の顎運動と咀嚼筋(咬筋,側頭筋,顎二腹筋)の筋電図を記録し,下顎切歯路,咀嚼サイクルおよび,閉口相,咬合相,開口相の長さ,開閉口筋の活動タイミングと活動量を計測した.また,咬合模型を採取し,歯列弓の三次元的形状を非接触三次元形状計測装置で記録した. 結果:咀嚼時の下顎切歯路は,KとP群では直線的なchopping型が多く,grinding型が少なく,運動の軌跡も不安定であった.咬合相時間はK群からP群,J群と次第に長くなった.開閉口筋の活動のタイミングのずれはK群からP群,J群と次第に大きくなった. 歯列弓形態では,歯列弓及び歯槽基底弓の幅,歯槽骨の幅,K群からP群,J群と次第に大きくなった.歯槽骨の高さはK群からH群まで次第に大きくなった. 顎運動および筋電図から得られた顎運動機能と歯列弓形態との関連は示されなかった. 考察とまとめ:幼稚園児から中学生まで顎運動及び筋活動が発達し,歯列弓および歯槽基底弓の幅,歯槽骨の幅も大きくなることが示された.しかし,顎運動機能と歯列弓形態との関連は示されなかった.さらに上下顎歯列弓の三次元的形状パターン,上下顎歯列弓の対合関係等について三次元解析を行い,検討が必要と考える.
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