研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)は関節を主病変とし,全身の支持組織を多発性におかす慢性の炎症性疾患である。RAの随伴症状として口腔乾燥,開口制限などが認められ,RA患者は特有の歯科的な問題を多く有していると考えられるが,我が国ではRA患者の口腔状態・顎関節に関する疫学的調査はほとんど行われていない。本研究は,RA患者の口腔内状態および顎関節所見を把握する目的で,某総合病院でRAと診断され外来治療を受けている女性RA患者142名と同病院に受診中の女性非リウマチ患者143名を対象に調査を行い,以下の結果を得た。 1.現在歯数,M歯数,DMF歯数は有意にRA患者が少なく,無歯顎者率,パーシャルデンチャー装着率,フルデンチャー装着率は有意にRA群が多く認められた。 2.RA群で顎関節症と診断された者は67.6%であり,コントロール群の32.9%より有意に多く認められた。 3.RA群の顎関節症患者のうち、変形性顎関節症であると診断された者が最も多く認められた。 4.RAの重症度を評価したSteinbrocker stageおよびRA罹病期間は顎関節症の罹患率と相関が認められた。 5.RA罹患期間が最も短い5年以下群と最も長い21年以上群の間で顎関節症と診断された者の割合に有意差が認められた。 これらの結果から,RA患者はコントロール群に比較すると喪失歯が多く,顎関節症の罹患率が高いこと、RAが重度であるほど顎関節症の罹患率が高いこと、RA罹患期間が長いものほど顎関節症の罹患率が高いことが明らかとなった。
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