研究概要 |
目的:現在,乳歯の修復には,ほとんどが接着性コンポジットレジンが使用されている。そのメリットに,歯質削除量の少なさがあるが,アマルガムのような歯質削除量の多い窩洞や感染歯質のみの削除量にとどまる方法が使用されているのが現状である。そこで,平成10,11年度では,窩縁からの微少漏洩が少なく,未重合を残存させず,最小限の歯質削除による窩洞形態とそれに適したレジンの種類を抽出した。本年度は,このような窩洞を形成するに適したバーを試作したので,幼犬を用いて窩洞を形成し,従来のバーの使用時と,切削による歯髄への影響について比較した。研究方法:材料は,同日同じ母犬から出産した生後2か月の雑種幼犬9頭である。ペントバルビタールで腹腔麻酔を行い,下顎右側第三乳臼歯に,試作バーで深さ約0.5mmの窩洞を形成し,左側の同名歯には,ダイヤモンドバーFG301バーで形成した。その後,ストッピングを窩底部に置き,その上からハイボンドカルボセメント^<TM>を充填した。形成3日後,14日後,28日後に,下顎骨を摘出し,固定後,プランクリクロ液で脱灰を行った。次いで脱水をし,パラフィンにて包埋し,厚さ30μmのへマトキシリン-エオジン染色を施した切片で,歯髄組織の状態を観察した。結果と考察:窩洞形成3日後では,実験群,対照群ともに,毛細血管の拡張と窩洞に近接した部位での象牙芽細胞の消失ならびに空胞変性が認められたが,対照群でそれがより強かった。14日後では,両群とも,空胞変性は認められないが,窩底部に近接した歯髄組織は,炎症性の細胞浸潤が強く,毛細血管の拡張が認められ,やはり,対照群で強く現れていた。28日後になると,試作バーを使用した場合,炎症性の細胞浸潤はほぼ消失し,毛細血管の拡張も見られなかったが,対照群では,それらの炎症がなお残存していた。これらの結果から,本研究期間の成果から試作された接着性コンポジットレジン用のバーは,臨床にも応用可能なものと考える。
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