研究概要 |
第三リン酸カルシウム(TCP)で調製したスラリーを人工的に脱灰したエナメル質片に作用させ,さらにYAGレーザー光を照射することによって生ずるレーザーアブレーションがエナメル質の再石灰化にどのような影響を及ぼすかを観察した。 抜去永久歯の表層を約200μm除去してから,通法に従って研磨処理後,0.1M乳酸緩衝液(0.30mM-HAp,pH4.5)中で4時間脱灰したものをエナメル質片とした。エナメル質片は2分割して,一片をスラリー作用とレーザー光照射の実験用に,他方を対照用とした。平均粒径が0.41μmのTCPで調製した10%スラリーの1μlをエナメル質片に塗布し,種々の条件下でレーザ光照射を行った。レーザの波長域は,QスイッチYAGレーザの第2高調波,第3高調波および第4高調波の532nm, 355nmおよび266nmとした。照射条件は, 532nmが160mJ(2000shots)と300mJ(2000shots), 355nmが70mJ(2000shots)と150mJ(2000shots), 266nmが70mJ(2000shots)とした。実験用のエナメル質片は,さらに人工唾液に浸漬(4週間)した場合の影響についても観察した。再石灰化実験が終了したエナメル質片は,精製水で十分に洗浄してから,SEM,EPMAおよび微小部X-ray解析に用いた。それぞれの波長のレーザ光照射で,エナメル質表層は粗像な堆積物によって覆われることが,SEM像から明瞭に観察された。さらに,人工唾液の浸漬操作を加えることによって,堆積物の固着性が増し,かつ堆積物表層の平滑化がみられた。この傾向は,355nmおよび266nmのUV域で強く認められた。堆積形を微小部X-ray回折で同定したところ,Hydroxyapatite Ca_<10>(PO_4)_6 (OH)_2とCalcium Phosphate Hydrate Ca_3(PO_4)_2・xH_2Oの結晶を認めた。
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