研究概要 |
サブミクロン粒子の第三リン酸カルシウム(TCP)から20%TCPスラリーを調製し,さらに同スラリーを用いて厚さ数十μmのTCPシートを作成した。スラリーおよびシートを脱灰エナメル質に塗布または貼付けて,同時にQスイッチYAGレーザーまたはCO_2レーザーから得られる各種波長のレーザー照射を行って,レーザーアブレーションのエナメル質再石灰化に及ぼす影響を観察した。 抜去永久歯の表層を約200μm除去してから,通法に従って研磨処理後,0.1M乳酸緩衝液中で4時間脱灰したものを本実験のエナメル質として用いた。エナメル質試験片の一方は,TCPスラリーを塗布あるいはTCPシートを貼付けレーザー照射を行った同時作用群,他方は塗布あるいは貼付けのみの対照群とした。同時作用群と対照群の一部は,さらに人工唾液に浸漬(4週間)し,再石灰化への影響について観察した。レーザー照射は,CO_2レーザー(OPELASER-03S,YOSHIDA)の10,600nmおよびQスイッチYAGレーザー(YAGMASTER YM-1200,LUMONICS)の基本波長1,064nmを非線形光学結晶の第3高調波355nmおよび第4高調波266nmを用い波長変換して出力した。レーザーの照射条件は,CO_2レーザーが0.8〜1.0Wで1sec.,YAGレーザーが355nmが70mJ(2,000shots)と150mJ(2,000shots),266nmが70mJ(2,000shots)とした。 エナメル質試験片にレーザーを直接照射すると,YAGレーザー(355nm)では70〜100mJ/cm^2のエネルギー,CO_2レーザーでは0.5W,1sec.のエネルギーでレーザーアブレーションの発生を認めることができた。TCPのスラリーおよびシートとCO_2レーザー照射による同時作用群のエナメル質試験片では,レーザーアブレーションによると考えられるレーザーアブレーションプルームの形成が認められた。プルーム上に人工唾液浸漬によって再石灰化層の形成が認められた。
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