研究概要 |
歯科用デジタルX線画像診断システム(Dixel Lan)は,歯科臨床で応用することを前提に開発された機器である.そこで本年度は,本システムを身元不明死体の身元確認に応用するための第一歩として,画像管理ソフトを含むハードウェアーを身元確認作業で実用化するための最適化を行った.つぎに,現像・定着処理をせずにX線画像を直接取り込むことのできる本システムの特性を活かし,下顎小臼歯歯根部の6ヵ所における歯根幅に対する歯髄腔幅の割合を頬舌方向と近遠心方向のデジタル画像上で計測し,計12項目の計測値を要因とした年齢推定のための重回帰式の算出を試みた. 【結果】本システムを法医鑑識の実務で応用できるよう携帯化を図るためには,デスクトップ型PCのデジタルX線画像用ソフトをノート型PCで運用するとともに,画像入力時のスイッチの回路を携帯用X線照射器の回路に合わせる必要がある.そこで,当教室に既存のノート型PCにデジタルX線画像用ソフトをインストールした結果,同ソフトは支障なく作動することが確認された.また,スイッチの回路に関しては,X線照射器の電源供給装置に信号検出器を取り付けることで閾値を間接的に合わせることが可能となり,本システムの汎用性を広げることができた.ただし,PCと本システムの総重量は約11kgにも達することから,今後,軽量化を図る必要がある.また,身元不明死体のX線画像のデータベース化およびその運用には,既存のソフトの大幅な修正が今後の課題として残された. つぎに,実年齢と下顎小臼歯を資料として得られた推定年齢との重相関係数は,第一小臼歯では0.89,第二小臼歯では0.82であった.推定のための要因は,いずれも1%の危険率で年齢との有意な相関が認められた.また,偏相関係数が高かった項目は,第一小臼歯,第二小臼歯ともに頬舌側方向の歯頸側に近い部位であった.
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