屋久島で捕獲され日本モンキーセンター犬山野猿公苑で飼われていた、日本モンキーセンター栗栖研究所所有の第1世代から第4世代までの雌成獣ヤクシマザルの乾燥頭蓋を用いて、X線管球の焦点-フィルム間距離165cm被写体-フィルム間距離15cmでX線の主線が外耳道に挿入された左右のイアーロッドを結ぶ直線の中点を通過しフィルムに直行する、通常矯正治療の診断に用いられる撮影条件で正貌頭部X線規格写真を撮影し、写真上で計測点間距離を計測した。 得られた計測値に対して、第一世代と各世代間で統計処理(t検定および主成分分析)を行った結果、顎骨の形態に世代を追って縮小傾向が生じ、下顎が頭蓋に対して小さくなることが示唆された。 ヤクシマザルの食性は、屋久島では果実、葉、種子、花、昆虫およびキノコを食しており(楊妻、1995)、日本モンキーセンター犬山野猿公苑では餌としてサツマイモ、リンゴ、さなぎ、小麦、果実およびピーナッツを与えられていることから、顎骨の形態のこの変化は野生状態から人工的な状態への食生態の軟食化によるものと考えられる。 今後は、歯および歯列弓に対して、大きさと形の検討を加える。
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