第3臼歯に欠如歯を有するELマウスと欠如歯が認められない野生型マウスであるMSMマウスとの遺伝的交配実験を行ない、F2 intercrossおよびbackcrossマウスを作成した。 (1) (EL×MSM)×(EL×MSM)ならびに(MSM×EL)×(MSM×EL)の交配から110匹のF2 intercrossマウスが得られ、そのうちの10匹に欠如歯が認められた。親系であるELマウス(10匹)では第3臼歯が4本欠如し、MSMマウス(10匹)では欠如歯は認められなかった。さらに、(EL×MSM)および(MSM×EL)のF1マウス21匹では欠如歯が認められなかった。 (2) (EL×MSM)×ELの交配から64匹のbackcrossマウスが得られ、そのうちの7匹に欠如歯が認められた。親系であるELマウス(3匹)は第3臼歯が4本欠如し、MSMマウス(4匹)では欠如歯は認められなかった。さらに、F1マウス(EL×MSM)11匹では欠如歯が認められなかった。 以上の結果から、欠如歯成因には遺伝的要因の関与が大きく、遺伝形式は劣性であることが強く示唆された。そこで、マウス第3臼歯の欠如歯成因に対する候補染色体の特定を目的とし、平成10年度において検出したinformativeなMITマーカーを用い、F2 intercross(10匹)およびbackcrossマウス(7匹)を試料として連鎖解析を行なったところ、染色体3番が候補染色体である可能性が強く示唆された。さらに染色体3番における詳細な連鎖解析を行なったところ、F2マウスにおいてD3Mitl7、38、194で(X^2=22.6、p<0.0001)、N2 backcrossマウスにおいてD3Mitl7、38、194で(X^2=3.2、p<0.05)と高い連鎖結果が得られた。連鎖解析結果より染色体3番上の44〜49cM付近に候補遺伝子が存在するものと思われる。
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