研究課題/領域番号 |
10671958
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
長谷 則子 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (30148019)
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研究分担者 |
西村 康 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (20139562)
熊坂 純雄 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (10161697)
進士 久明 神奈川歯科大学, 歯学部, 助教授 (00147993)
浜田 作光 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (60218534)
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キーワード | 微量金属 / 鉛 / カドミュウム / 大気汚染 / 小児 / 乳歯 / ヒト |
研究概要 |
環境からの人体に対する重金属の汚染は、産業革命後著しく増大し、日本においても今世紀に入り増加を示しています。鉛の毒性については多くの研究がなされ、鉛はほかの多くの重金属と同様に生体酵素のインヒビターとなり毒性を示します。無機の鉛は骨中のカルシュウムと置換し、その後長期にわたり体中に放出され人体に影響を与えるとされています。人体の鉛汚染の指標として血中の鉛濃度が一般的に用いられ、その他には、尿、毛髪、骨等が利用されている。これらの試料は、採取時期の含有量を同定することに役立ちます。特に乳歯は、石灰化時期に環境から取り込まれ、その後ターンオーバーに乏しいため、石灰化期の暴露量を定量できる特性があります。.そこで、乳歯中の鉛量を定量することによ小児の生体負荷量の指標として、その個体の過去における生態環境を把握する試料としました。我々は、環境のHost側への影響を検討する目的で都市における大気の鉛汚染の主たる原因であるモータリゼイションに着目し、排気ガス規制による自動車ガソリンの鉛添加規制の実施前後による相違について検討を加えました。すなわち出生年代の異なる小児を2群に大別し、環境中の重金属による生体暴露を、Host側の指標となる歯質中濃度と大気中の重金属濃度について比較検討した。 その結果、鉛は大気汚染物質として注目されてきた。1975年2月にガソリン中の四エチル鉛の添加規制が実施され、それに伴い神奈川県公害センターの計測により大気鉛濃度は減少傾向にあることが明らかとなった。過去の生体負荷量を知る指標として、他の生体資料に比較し、代謝が極めて遅い乳歯歯質が最適であり、比較的資料が得やすい利点もある。その結果、エナメル質で約60%、象牙質で約83%の減少が認められた。大気中の鉛が、生体内の鉛吸収量に強く影響しており、この結果規制後に出生した小児の乳歯中の濃度が有意に減少したものと考えられた。
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