研究概要 |
妊娠中のラットの歯の移動の際の骨代謝を検討するため、骨代謝マーカーである血清中のBGP(bonc-gla-protein,osteocalcin)と他の生化学的検査項目について検索を行った。[試料および方法]:成熟雌性Wistar系ラット(12週齢)54匹を非妊娠群(NP)、妊娠群(P)、妊娠+歯の移動群(PE)の3群に分けた。歯の移動は妊娠の確認後(プラグの検出)、約10gの力を用いて、下顎第一臼歯を頬側7,14,21日間移動。採血は心臓より約5〜6ml採取(10:00〜12:00a.m.)、3000rpm、10分間遠沈し血消を分離し、BGP(Priceらの方法に従い、抗ラットBGPウサギ血清を用いたRIA法)、Ca、Inorg-P,Alk-P、Urea-Nitrogen、Na、K、Total-protein、Total-CHOについて計測した。統計学的検索は、ANOVA分析、さらに各検査項目間の相関を求めた。なお、データーが当初の予測より増えたため、統計処理に当たり、4GBハードディスク、640MBコンパクトMoなどを購入した。[結果]:(1)P/PE群の胎児数は平均13匹。(2)体重変化はNP群に対してPE群は21日目でわずかに減少。(3)NP群に対してP/PE群の21日目では、BGP、Total-protein、Total-CHO以外のすべての項目で有意に減少(p<0.01)。Total-CHOは有意に増加(p<0.05)。(4)P群に対してPE群では、21日目でCaの減少(p<0.01)、Total-proteinの増加(p<0.05)。(5)各群内で特に強い相関(p<0.01,p<0.001)がみられた検査項目は、NP群:CaとTotal-CHO(正)、P群:CaとTotal-CHO(負)、Inorg-PとTotal-CHO(負)であった。 [考察および結論]:骨代謝マーカーであるBGPは各群間で有意差はなかった。PRE群では、Ca、Inorg-PとTotal-CHOの間に負の相関がみられ、7,14,21日目とCa、Inorg-Pが減少するにつれTotal-CHOが増加した。P群とPE群では有意差はなかった。以上のことから、骨代謝に妊娠が与える影響と歯の移動が与える影響とを比較すると、歯の移動が与える影響は少ないことが示唆された。しかし、P群に対してPE群で21日目でCaの減少がみられたことは、妊娠中の歯の移動が骨代謝に何らかの影響を与える可能性も示唆している。
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