研究概要 |
I.成熟雄性Wistar系ラット(12週齢)75匹を対照群(C)、装置のみを装着した偽移動群(Psue)、歯の移動群(E)の3群に分けた。歯の移動は1,3,5,7,21日間とし(各5匹)、上顎第一臼歯を移動し、血清生化学的計測を行った。[結果]:1)有意差は見られなかったが、E群の血清BGP値は、C群・Psue群と比べ1-21日目の各実験期間で僅かな増加傾向を示した。2)安定期(7-21日目)のE・Psue群の血清Alk-Pは、歯の移動初期(1-5日目)に比べ、有意な増加を示した。以上のことから実験的歯の移動は、ラットにおいて全身的影響を与えている可能性が示唆された。 II.8週齢雄性Wistar系ラット80匹をCa欠飼料で4週間飼育したものと、通常飼料で4週間飼育したものとに分け、さらに歯の移動群、週齢が対応する対照群、計4群(cont,exp,Ca^-,Ca^-+exp)に分ける。歯の移動は約10gの力で1,3,5,7日間行い、血清生化学的計測を行った。[結果]:1)Ca欠群(Ca^-,Ca^-+exp)は通常飼料群(cont,exp)に対し、高い血清BGP値を示した。2)血清BGP・血清Alk-Pは、歯の移動3日目で対照群(C,Ca^-)に対し移動群(exp,Ca^-+exp)で低い値を示した。 III.成熟雌性Wistar系ラット(12週齢)54匹を非妊娠群(NP)、妊娠群(P)、妊娠+歯の移動群(PE)の3群に分けた。歯の移動は、7,14,21日間行い、血清生化学的計測を行った。[結果]血清BGPは各群間で有意差はなかった。P/PE群では、血清Ca、血清無機Pと血清総コレステロールの間に負の相関がみられ、7,14,21日目と血清Ca、血清無機Pが減少するにつれ血清総コレステロールが増加した。P群とPE群では有意差はなかった。しかし21日目で、P群に対してPE群で血清Caが低い値を示したことは、妊娠中の歯の移動が骨代謝に何らかの影響を与える可能性も示唆している。 IV.健常人・成人女子抜歯症例26例について治療前と抜歯後について血清BGP、血清Alk-P、血清Ca、血清無機P、血清尿素・窒素、血清総蛋白について計測した。[結果]:抜歯後血清BGPのみが有意に増加した。
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