チタン製インプラントアバットメント(アバットメント)をレジンステントに植立し、ヒト口腔内に1週間装着しプラークを形成させた。プラーク形成アバットメントに対して以下の処置を行った:1.プラスチックスケーラー(PS)処置群、2.歯面研磨(QJ)処置群、3.PS+テトラサイクリン(TC)処置群、4.PS+酸化水(AOW)処置群、5.未処置(UNT)群。また未使用アバットメントをコントロール(CONT)群とした。前述のように処置したアバットメント表面に残存しているプラークおよび未使用のアバットメントを走査型電子顕微鏡を用いて観察し、各処置面のプラークスコアを算出した。さらに、未使用および各処置を行ったアバットメントをラット背部皮下に埋入し、インプラント周囲の炎症反応を組織学的に観察した。1.プラーク除去効果:いずれの処置群においてもUNT群と比較して、プラーク除去効果を認め、統計学的な有意差を認めた(P<0.05)。QJ処置群のプラーク除去効果は最も高かった。しかし、UNT群を除く他の処置群およびCONT群と比較するとアバットメント表面は、重炭酸ナトリウムの噴霧によって生じたと思われる無数の損傷が認められ粗造感を呈した。 2.炎症反応:いずれの処置群におけるアバットメント周囲の炎症性細胞数はUNT群と比較すると有意に少なかったが、CONT群と比較すると有意に高かった(P<0.05)。PS+TC処置群の炎症性細胞数は最も少なく、この群と他の処置群との間に統計学的有意差を認めた。以上のことから、チタン製アバットメント上に形成されたプラークの効果的な除去法は、PSで可及的に視認できるプラークを機械的に除去したのち、TC水溶液による化学的洗浄を併用することで残存プラーク中の細菌や代謝産物に対して有効に作用し、結果として軟組織に対する炎症反応を極力抑制できることが示唆された。
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