【方法】実験には、自然発症糖尿病(GK)ラットと、JCLウイスターラット各100匹の計200匹を用いた。動物の上顎右側第2臼歯の歯頚部にナイロン糸を結紮し、J-1、2群(JCLラット)、G-1、2(GKラット)の4群(各群50匹)に分けた。J、G-1群にはストレスを与えず、J、G-2群は糸挿入後、隔日間隔で金網による拘束ストレスを12時間行った。各群の動物は、ストレス負荷直前、および負荷後2、4、6、8、10日でブドウ糖負荷試験、採血処置を行い、2、4、6、8、10日で各群10匹ずつ屠殺した。その後通法に従い、上顎右側第2臼歯の連続組織切片を作製し、根分岐部を病理組織学的に観察した。 【結果】J、G-1群とも順調な体重増加が認められたが、J、G-2群ではストレス負荷後、低い体重増加を示した。ブドウ糖負荷試験では、J、G群ともストレス負荷群で空腹時血糖値が上昇していた。ストレスの指標としてのACTH、カテコールアミンは、J群では実験期間中J-2群が高く、G群でも同様な傾向を示したが6、8、10日ではG-2群で低下する傾向にあり、G-2群でストレスに対する適応が起こっていることが推察された。また、胸腺の相対重量は、ストレス負荷群で有意に減少しており、免疫系の減弱も推察された。病理組織学的に、J群のストレス負荷群では上顎第2臼歯の根分岐部の血管周囲付近に神経線維の変形が多く観察され、その部位における炎症性細胞の増加がみられたが、G群ではそのような所見ではみられなかった。さらに、J、G-2群とも組織形態計測学的に上顎第2臼歯の根分岐部では8、10日目で歯槽骨吸収が有意に進行していた。 【考察】GK(糖尿病)ラットにストレスを負荷すると、ストレス負荷非糖尿病ラットと同様に根分岐部の破壊が促進される傾向が認められた。しかし、神経変性度は少なく、ストレスの影響機序が違うことが示唆された。
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