研究概要 |
筆者らの開発した方法で種々の配列の8-オキソG含有DNAオリゴマーや8-オキソGが鎖内部のリンカーで結合したオリゴマーを合成し,必要に応じて5'または3'末端を^<32>Pで標識したものを調製した.8-オキソG残基の隣接部位を4種の塩基でそれぞれに置換した鎖のKMnO_4反応を行い,未反応基質の残存率から求めた反応速度定数を求めたところ、通常塩基の反応性の序列はG>A>T,Cであり,この順序はDNA塩基の電子供与能に一致することがわかった. 一方,塩基部が欠如したabasicアナローグやヘキサ(エチレシグリコール)鎖(またはそれらの連続体)をスペーサーとして8-オキソGに直結させた形(他方の直結末端はG塩基)のオリゴマーのKMnO_4反応を行ったところ,長鎖のリンカーでも比較的に効率よく,そのG塩基の損傷が誘起されることが明かとなった.またこの反応はデオキシグアノシンやデオキシアデノシンの添加によって阻害されることを見い出した(dG>dA).以上の結果から,"8-オキソG残基の酸化により誘発される周辺残基の損傷"には,酸化され易い8-オキソGの酸化がまず起こり,生ずる中間体(未同定)が隣接位や近傍の塩基、特にG塩基から電子を奪う電子移動過程が含まれていること,またこれらの電子移動は、その中間体とG塩基の直接的な接触によって起こると推定された.この推定は,この研究で行われたその他の実験によっても支持されている.その他の酸化損傷塩基8-オキソA, 5-ヒドロキシU,5-ヒドロキシCを含むDNAオリゴマ-類のKMnO_4反応でも反応性に違いはあるものの同様な周辺塩基の損傷が起こることが認められた.詳細については検討中である.
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