研究概要 |
筆者らは、7,8-ジヒドロ-8-オキソグアニン(DNA酸化損傷塩基.8-オクソGと略す)含有DNAオリゴマー類とKMnO4との反応を行ったところ,8-オキソGの酸化により隣接部位や周辺部位での損傷が誘発されることを見い出しており、昨年度の研究で、通常塩基の反応性の序列はG>A>T,Cであり,この順序はDNA塩基の電子供与能に一致することがわかった.反応には8-オキソGの酸化により生ずる中間体(未同定)が隣接位や近傍の塩基から電子を奪う電子移動過程が含まれていることが推定された. 本年度は,この損傷反応の適応範囲を検討するために酸化損傷塩基である8-オキソAや5-ヒドロキシUや5-ヒドロキシCを含む-本鎖DNAオリゴマーを用いてKMnO4反応を行った.その結果,8-オキソAの周辺塩基損傷能は8-オキソGと同程度であり,5-ヒドロキシUや5-ヒドロキシCの場合はその能力がかなり劣っていた.一方,8-オキソG,8-オキソAの周辺塩基損傷に関与すると考えられる8-オキソG,8-オキソAの酸化中間体の構造を推定するために8-オキソGおよび8-オキソAの2'-デオキシリボシド誘導体を用いてKMnO4反応を行ったところ,それぞれにつき3種の生成物を単離し構造を決定することができた.それらの情報をもとに,活性中間体の構造を推定した.また,周辺塩基の酸化損傷の生成物を同定するために,モデル基質としての8-オキソGとGからなるジヌクレオシドモノリン酸の合成を行ったが,KMnO4反応についてはこれからの課題である.また,生体関連の酸化系での反応を検討するための8-オキソG含有DNAの放射線照射については現在,検討中である.
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