研究概要 |
医薬品の母核として重要な芳香複素環化合物の一つであるインドール誘導体のトレースレスリンカーを用いる固相合成を検討した.特に閉環反応を中心に検討を行い,以前に液相反応で開発した縮合複素環合成の手法の適用を試みた.次に,キノリン誘導体の合成を固相Heck反応を利用して検討し,光照射下による新しいシクロリリース法の開発を行った.また,より有効にライブラリーを構築するための様々な置換基の導入についても検討を加えた.複素環化合物への有効な置換基の導入法としてメタル化反応を用いる方法があリ,種々の化学選択的なメタル化反応を固相反応へ活用し新たな固相における炭素-炭素結合生成反応を検討した.最近溶液反応で注目されている亜鉛あるいは銅アート錯体を用いるハロゲン-メタル交換反応とメタルアミド試薬を用いる脱プロトン化反応である.前者については,ハロヘテロ環化合物のジンケートを用いるメタル化および親電子剤との反応を検討し良好な結果が得られた.また,メタルアミドを用いるメタル化反応については,インドール誘導体をはじめとする様々なヘテロ環化合物についてについてメタル化反応および親電子剤との反応を種々試みた.ハロゲン-メタル交換反応については,溶液反応とほぼ同等の結果が得られ,固相反応においても円滑に反応が進行した.固相における脱プロトン化反応については,さらに反応試薬,反応条件の検討が必要と考えられたので,まず新しい脱プロトン化剤として亜鉛アミドアート錯体を用いる選択的な芳香環の水素-亜鉛交換反応の開発を行った.この亜鉛アミド試薬を用いてさらに固相脱プロトン化反応の検討を行った.現時点ではまだ反応条件の最適化には至っていないが,利用展開の可能性を見いだすことができた.この応用として,固相メタル化反応を用いるカンプトテシンなどの生理活性複素環化合物の合成についても検討した.
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