研究概要 |
すでにキラル合成素子として多様の用途を持つシクロペンタジエノン等価キラル合成素子,ケトジシクロペンタジエンおよびこれに関連する誘導体の不斉水素転移反応を適用することによって合成することを検討した. ケトジシクロペンタジエンの前駆体となるラセミ体エンドアリルアルコールについてまず,Ru^<II>-(S,S)-mono-N-tosyl-1,2-diphenylethylenediamine[Ru^<II>-(S,S)-TsDPEN]触媒存在下アセトン中アセトンへの不斉水素転移反応を検討した.通常,不斉水素転移反応条件下にはラセミ基質の半量がアキラルなケトン体となり理論的にキラルアルコール体の収率は50%を超えることがない.しかしながら,本基質の場合はキラルなバックグランドを持つので成績体の双方がキラリティーを持ち,2種のキラル体が得られることになる.事実,最高96%eeのアルコールと61%のケトンを与えた.さらに高いエナンチオ選択性は基質アリルアルコールの3位にヒドロキシメチル基あるいはそのシロキシやエステル誘導体によってもたらされた.すなわち,ヒドロキシメチル体は>99%eeのアルコールと94%eeのケトン,TBSエーテルは>99%eeのアルコールと95%のケトン,そしてピバレートエステルは>99%eeのアルコールと98%のケトンを与え,実用的に利用出来るレベルに達した.本反応によって得られた(-)-アリルアルコール体の活用の一端として海洋産海綿の産生する抗腫瘍性セスキテルペン(+)-curcuphenolならびに(+)-α-ヒドロキシメチルケトン体の活用の一端としてStreptomyces eurythermusの産生するグラム陰性および陽性菌に活性を持つ(-)-pentenomycinの合成を検討し,それらのエナンチオ制御合成に成功した.
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