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本研究では、まず始めに迅速X線結晶解析により構造解析を行なった。その結果、THF溶液のMeMgClではMe_2Mg_4Cl_6(THF)_6、t-BuMgClでは{[Mg_2Cl_3(THF)_6]^+・[t-BuMgCl_2(THF)]^-}、そしてPhMgClでは{2[Mg_2Cl_3(THF)_6]^+・[Ph_4Mg_2Cl_2]^<2->}の新規分子構造を決定し、これらはSchlenk平衡構造の一部であった。しかしながら、これらの結晶は極めて不安定であり、種々の条件下で常に良質の単結晶を得ることは困難である。さらにこれらの分子構造は、溶液中の構造を反映しているとは限らない。そこで、低温エレクトロスプレーイオン化法質量分析(Cold ESI-MS)を開発し、溶液中におけるGrignard試薬の構造解析を行なった。Grignard試薬として、THF溶液のMeMgCl、MeMgBr、EtMgCl等を用いた。質量分析計は、JMS-700T(JEOL)を用いた。乾燥ガスである窒素は冷却装置にて-20℃まで冷却し、脱溶媒プレート温度は80℃に調節した(Cold ESI-MS)。
Cold ESI-MSで観測されたTHF溶液のGrignard試薬のイオン組成は、3量体のSchlenk平衡構造の一部である[RMg_2X_3(THF)_n-H]^+または乾燥ガスの窒素原子が付加した[Mg_2Cl_3(THF)_n+N]^+であった。今回開発したCOld ESI-MSによって、ほとんど解明されなかった溶液中のGrignard試薬の構造を解析することができ、約0.1mMのTHF溶液中のその構造は3量体のSchlenk平衡構造であるとことが分かった。
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