研究概要 |
新規セスタテルペンdysidiolideは細胞周期制御に関与する脱リン酸化酵素cdc25Aを特異的に阻害し細胞周期をG1/S,G2/Mの2箇所で停止させ、A-549ヒト肺癌細胞系、p388ネズミ白血病細胞系の増殖をそれぞれIC_<50>4.7μM、1.5μMで抑制する。Cdc25Aは細胞周期のG1期からS期への移行に関与するcdk2-サイクリンAコンプレックスとG2期からM期への移行に関与するcdc2-サイクリンBコンプレックスの15番目チロシン残基と14番目スレオニン残基のdualフォスファターゼで、脱リン酸化によりコンプレックスが活性化され細胞周期の進行を促進する。癌細胞ではこれら細胞周期進行を促進するG1,Mサイクリン、cdk,cdc2の異常発現が確認されており、これらコンプレックスを活性化するcdc25Aを特異的に阻害するdysidiolideは抗癌剤のリードとして極めて重要である。 現在までの本研究の進捗状況は極めて順調であり、本年度はdysidiolideの立体選択的不斉合成を完了した。2-メチルシクロヘキサノンから数工程を経て合成した光学的に純粋なジェンとクロトンアルデヒドとの分子間Diels-Alder反応より、所望の立体化学を有するオクタヒドロナフタレン骨格を有する付加体を主生成物として得た。続いて不斉4級炭素をアルデヒドエノレエートのメチル化により構築し、最終的に国内初のdysidiolideの不斉全合成を達成した。さらにその方法論に基づいて各種類縁体を合成し、dysidiolideよりも強力な新規cdc25A阻害剤の創出に成功した。
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