研究概要 |
われわれが開発した,ジビニルシクロプロパノレートのアニオニックオキシCope転位を用いる効率的な七員炭素環形成反応を,ジビニルシクロブタノレートのアニオニックオキシCope転位に拡張するととを目的として,α,β-不飽和エポキシシランと求核剤との反応の検討を行った.ジビニルシクロブタノレートを形成するためには,求核剤はシリル基の反対側からエポキシドを攻撃する必要があるが,環開裂は立体的に不利であるにもかかわらず,シリル基側で起こることが明らかになった.そこで,当初の計画を若干変更し,γ-ケトアシルシランとビニルリチウムとの反応により四員環を形成することとし,フェニルリチウムを用いた予備実験を行った.その結果,Brook転位と分子内アルドール反応がタンデム型で進行し,収率よくシクロブタノールが生成することが判明した.また,本反応の,一般性を明らかにする事を目的として五〜七員環形成反応についても検討したが,環の安定性とは逆に,環が大きくなるにつれて収率が低下した.この結果は,反応機構的に非常に興味が持たれる. 以上の,予備実験の結果に基づきγ-アクリロイルアシルシランとβ-トリメチルシリルビニルリチウムとの反応を行ったところ,Brook転位,分子内アルドール反応,そしてアニオニックオキシCope転位が連続して起こり,立体選択的に八員環を合成することに成功した.来年度は,本反応の適用範囲,機構等を明らかにする予定である.
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