研究概要 |
1.ケイ素の特性を利用する八員炭素環形成反応の開発 昨年度に得られた知見に基づき,Brook転位を利用する新しい八員炭素環形成反応を,より柔軟性の高い方法へと展開することを目的として,基質の構造,反応温度などの検討を行った.その結果,γ位にエステル基を有するアシルシランとビニルリチウムとの反応で得られるγ-ビニル-γ-シリルラクトンに対し,ビニルリチウム誘導体を反応させることにより,Brook転位,分子内アルドール反応,そしてアニオニックオキシCope転位が連続して起こり,立体選択的に人員環が生成することが明らかになった. 2.β-(シリルカルボニル)-α,β-エポキシシランを用いる不斉[3+2]アニュレーション法の開発 昨年,α,β-エポキシシランと求核剤との反応が予想に反しα位で起こるということが明らかになった.そこで,β位にシリルカルボニル基を導入し,求核剤との反応についでBrook転位によってガルバニオンを発生させ,α,β-エポキシシランのエポキシ環を強制的にβ位で開裂させることを試みた.別ルートで合成した基質を用いた予備実験の結果,予想通り,β位でのエポキシ環の開裂により生じたアルコキシドがシリル基を攻撃してBrook転位がおこり五員環が形成することがわかった.来年度は,反応条件の検討を行うとともに,不斉α,β-エエポキシシランを用いた新規不斉[3+2]アニュレーション法の開発へと展開する予定である.
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