近年、細胞内情報伝達に関与する種々の蛋白質の相互認識部位に対応する10-20残基程度のペプチドにより、これらの蛋白質問の相互作用がブロックできることが報告されてきている。このアプローチによって、例えばある疾病の引き金を引くような細胞内情報伝達を阻止できれば、新しい疾病の治療法の開発への糸口になりうると考えられる。 申請者らは、膜透過ペプチドにより蛋白質相互認識部位に対応するペプチドを細胞内に導入するために、まず、膜透過性が報告されている幾つかのペプチドを蛍光標識し、蛍光顕微鏡を用いてペプチドの細胞内移行性の評価を行った。その結果、HIV-1ウイルスのTat蛋白質由来の15残基からなる塩基性ペプチドが容易に神経培養細胞PC-12の細胞膜を通過し、核に集積することを確認した。ついで、このペプチドをキャリアとして用いた細胞内蛋白相互作用の調節の可能性を検討するため、モデルとして近年種々の疾病に関与することで注目されている一酸化窒素合成酵素(iNOS)の誘導の調節を検討することにした。すなわち、iNOSの誘導の主たる引き金とされる転写因子、NF-@@S2K@@E2Bの活性化に関与する蛋白質I@@S2K@@E2Bのリン酸化部位、およびユビキチン化部位に対応するペブチドを合成し、選択的ジスルフィド架橋によりTatペプチドとのハイブリッドを合成した。さらに、iNOSの誘導をRT-PCR法で検出するアッセイ系の確立を現在行っている。今後、このアッセイ系を用いて、ハイブリッドペプチドによる細胞内導入及びiNOS誘導阻害活性について検討を行う予定である。
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