日本産のウリ科植物であるキカラスウリの塊根に含有される塩基性タンパク質でリボゾーム不活性化作用に基づく種々の生理活性を有するカラスリンについて、(1)遺伝子クローニングを実施するとともに、クローン化した遺伝子を大腸菌において過剰発現させることによるバイオ生産法を確立するとともに、(2)部位特異的変異誘発法によって種々の変異を導入したタンパク質を生産させ、(3)その生理活性を種々のアッセイ系で検討することにより、アミノ酸配列と生理活性の関係を解析することを目的として研究を実施した。 本年度は、このうちキカラスウリからのカラスリン遺伝子のクローニングとその過剰発現法の確立にに関する研究を行なった。 (1)カラスリン遺伝子のクローニング:既に単離されているトリコサンチン遺伝子の塩基配列に基づいて設計したプライマーを用いて、カラスリン遺伝子をPCR法によってクローニングしてその塩基配列を決定し、種々の分子生物学的性質を解析した。 (2)クローニングした遺伝子を種々の発現カセットベクターに組み込み、大腸菌での発現を検討した。その結果、発現ベクターとしてはmaltose-binding protein(MBP)との融合タンパク質として発現させるpMAL-cが適していること、発現レベルは融合させるペプチドのN末端側の領域の疎水性と逆創刊していること、確立した系を用いた場合カラスリンの成熟タンパク質はMBPとの融合蛋白質として、全タンパク質の30%程度のレベルで可溶性タンパク質として生産されることが明らかになった。 次年度は、この結果を基礎に、種々のカラスワンの部分フラグメント及び変異タンパク質を生産させるとともに、その活性を検討する予定である。
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