日本産のウリ科植物であるキカラスウリの塊根に含有される塩基性タンパク質で、リボゾーム不活性化作用に基づく種々の生理活性を有するカラスリンについて、(1)遺伝子クローニングを実施するとともに、クローン化した遺伝子を大腸菌において過剰発現させることによるバイオ生産法を確立するとともに、(2)部位特異的変異誘発法によって種々の変異を導入したタンパク質を生産させ、(3)その生理活性を種々のアッセイ系で検討することにより、アミノ酸配列と生理活性の関係を解析することを目的として研究を実施した。 昨年度の研究において、カラスリン遺伝子をPCR-クローニング法によって単離し、その分子生物学的性質を解析するとともに、組み換えカラスリンをmaltose-binding proteinとの融合タンパク質として生産させる系を確立した。本年度は、この成果を受けて、リボゾーム不活性化作用のアッセイ系を確立するとともに、カラスリンの種々の部分ペプチドを組み換え法によって生産し、その活性を調べた。 (1)アッセイ系の確立:リボゾーム不活性化タンパク質の作用の本質は、28S-rRNAの特定のサイトのN-glyciside結合を加水分解するN-glycosidaseとしての作用にあり、無細胞系でのタンパク質合成の阻害を調べる従来のアッセイ法は、この作用を間接的に検出しようとするものである。そこで、このrRNA N-glycosldase活性を直接検出するために、加水分解によって遊離するadenineをHPLCによって測定する方法と、加水分解によって生じるRNAフラグメントを電気泳動によって検出する2つのアッセイ系を確立した。 (2)上記アッセイ系を用いて、組み換えタンパク質のリボゾーム不活性化作用を調べた。その結果、MBPとの融合タンパク質でもその活性にはほとんど差がないこと、C末端側20アミノ酸を除去したカラスリンでは活性が全く消失し、この部分が活性発現に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
|