低温適応性を有するシロサケのトリプシンは、高い触媒活性が期待できる。そこでシロサケ幽門垂からトリプシンの効率的な分離法の確立、触媒機能の解析、逆性基質に対する挙動の解明、さらにペプチド合成触媒としての有用性を明らかにすべく研究を進め、現在までに以下の成果を収めている。 1、 シロサケ幽門垂からトリプシンの効率的な分離法の確立: 100gの幽門垂から約5mgのトリプシンを分離する方法を確立させた。得られたトリプシンは電気泳動で求めた分子量を基に、活性中心滴定からおおよそ30〜35%純度であった。また等電点測定からカチオン性1種以上、アニオン性3種以上の混合物であった。此の段階のトリプシンを750mgを確保した。 2、 触媒機能の解析及び逆性基質に対する挙動の解明: 上記1で分離された混合トリプシン300mgをイオン交換樹脂で分離して、比較的容易に単離できるアニオン性トリプシン100mgを得、触媒機能の解析及び逆性基質に対する挙動の解明を行い、哺乳類由来トリプシンより低温においても高い活性を有することを明らかにしつつある。 3、 ペプチド合成触媒としての有用性: 上記1で分離された混合トリプシンを触媒に逆性基質としてBoc-アミノ酸p-アミジノフェニルエステルを用い、アシルアクセプターとしてアミノ酸p-ニトロアニリドを用いてペプチド合成を行ったところ、0℃においても収率良くペプチドが得られることを確認している。この結果は日本薬学会第119年会(1999年3月)のハイライトに選ばれ注目されている。 以上、初期の目的をほぼ達成している。
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