新規トリプシン及びその類縁酵素をペプチド合成触媒に応用する研究は、その酵素機能の解明から生理活性ペプチドの臨床応用まで広い分野に関連する。我々はトリプシン及びその類縁酵素に対して高い親和性を有する多くのアミジン及びグアニジン誘導体を合成し、それらを基質としたペプチド合成を研究してきたが、本研究はこの成果を基に低温適応性を有する魚類トリプシンに着目し、シロサケのトリプシンの触媒機能の解明及びペプチド合成触媒としての有用性を明らかにするものである。 平成10年度にはシロサケ幽門垂から効率良いトリプシンの分離法を確立させ、またアニオン性トリプシンを単離した。単離された酵素の通常型基質及び逆性基質に対する挙動を明らかとすると共にBoc-アミノ酸 p-アミジノフェニルエステルを用いたペプチド合成の良い触媒となることを明らかとした。 平成11年度には単離されたアニオン性トリプシンのより詳細な機能及び構造解析のためのX線構造解析、及び幅広い逆性基質を用いたペプチド合成を実施し、天然型アミノ酸ばかりでなく非天然型アミノ酸含有ペプチド合成にも有用であると共に生理活性ペプチドであるエンケファリン合成に応用してその合成を達成している。これらの結果は数編の論文として投稿あるいは取り纏め中である。また、本研究関連のトリプシン及び類縁酵素に関しての報文は三編を数える。 以上、シロサケトリプシンの触媒機能の解明及びペプチド合成触媒として有用性など、所期の成果を得た。
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