研究概要 |
牛膝はヒナタイノコヅチAchyranthes faurieiの根を乾燥した生薬であり,漢方においてリュウマチ患者の抗炎症,利尿を目的に用いられてきた。成分として申請者らは,アグリコンの3位に複合型グルクロン酸を構成糖とするトリテルペン配糖体Achyranthosides A-Fの構造を明らかにした。一方,近年,シアロルイスXなど酸性複合糖質が白血球の炎症部位への過剰な遊走を阻止し,抗炎症剤として利用できることが明かとなってきている。現代科学により解明された本知見を背景に,牛膝がリュウマチ関節炎に有効であることと牛膝成分のAchyranthoside類が酸性複合糖質であることより,Achyranthoside類が抗関節炎活性本体である可能性は極めて高いと推定できる。そこで申請者らは,牛膝の粗サポニンをddy系雄性マウスの腹腔内に投与し,カラゲニン誘発足浮腫と足浮腫組織における好中球浸潤活性を測定して抗炎症効果を評価した。その結果,カラゲニン誘発足浮腫に対して抑制作用を示し,好中球に特異的に存在するミエロパーオキシダーゼ活性も有意に低下させた。さらに,FITCラベルされた抗ICAM-1抗体および抗ELAM-1抗体とフローサイトメーターを用いて,牛膝粗サポニンが50μg/mLの濃度において,LPS刺激HUBECにおけるICAM-1の発現を抑制し,ELAM-1の発現に顕著な影響を与えないことを見出した。現在,最も強い抗炎症活性を示す牛膝サポニンの精製と構造決定を検討中である。
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