1.前年度においてロシア甘草の塩化メチレン抽出物(PT ext.)から得たフェノール性成分のうち、PL-A、RL-B、RL-C、RL-D、RL-E、RL-G、RL-Hの7種について、耐性菌(MRSA)を含むグラム陽性細菌、酵母、かび、う蝕菌、乳酸菌に対する抗菌活性試験を行った。酵母に対しては明確な活性を示すものはなかったが、かびに対してはRL-Aなど一部の成分に活性が確かめられたほか、乳酸菌には試験サンプルのほどんどに弱いながら活性が認められた。MRSAを含むグラム陽性細菌やう蝕菌に対しては、RL-A、RL-D、RL-Gなどはかなり強い活性を示した。 2.ロシア甘草の主要成分についてリノール酸の酸化抑制作用について検討した。その他、前年度で検討したラット肝ミトコンドリアを用いた抗脂質過酸化作用については呼吸鎖の電子伝達系の遮断下と非遮断下の両方について、NADPHまたはDHF誘導の脂質過酸化抑制作用について詳細に検討した。これらの系でもラット肝ミクロソームを用いた抗脂質過酸化作用において強い活性を示したRL-Mに極めて強い活性が認められた。RL-Mは大半の天然起源抗酸化作用物質に共通してみられるカテコール残基を持たない点で注目に値する。更に、フリーラジカルの誘導による赤血球の溶血の阻害試験も行った。残念ながら精製サンプルを用いた試験は赤血球に対する直接作用のため検討できなかったが、ロシア甘草の脂溶性画分(PT ext.)について検討した結果、明確な赤血球膜保護活性が認められた。
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