研究概要 |
i) 細胞接着は生体内において細胞間の情報伝達や免疫、増殖、分化などの様々な生体反応において重要な働きを演じている。癌の血行性転移でも、血管内皮細胞と癌細胞を接着させる物質が重要な働きを担っている。細胞接着阻害剤は癌転移阻害活性を示すものであり、近年糸状菌より単離されたMacrosphelide A(1)がこれに相当する。ii) ある種の放線菌より単利された(-)-Chuangxinmycin(2)は尿路感染症に対して有効に機能する。平成10年度では、これらの生理活性化合物の不斉合成を目指し、先ず酵素機能を用いて重要な光学活性中間体を合成し、次いで上記生理活性化合物の全合成の検討を行なった。(1)の不斉合成にあたっては、光学活性な(4S,5S)-epoxy-(2E)-hexenoate3が必要となり、これを酵素機能を基盤として合成した。得られた(4S,5S)-3とルイス酸存在下ベンジルアルコールとの反応により(4R,5S)-4-benzyloxy-5-hydroxy-(2E)-hexenoate4を得た。2分子の(4R,5S)-4と(3S)-hydroxybutyrate5を順次結合させ、現在マクロラクトン化を経て(1)の全合成に向けて検討中である。次に4-iodoindole6と(2R,3S)-epoxy-butyrate7との反応により得られた(2R,3S)-インドールマイセネート8を(2R,3S)-チオインドールマイセネート9へ変換後、目的とする(-)-(4S,5R)-Chuangxinmycin(2)の全合成を達成した。本年度は更に酵素反応を基盤としてヌクレオシド系抗生物質であるNikkomycinB(10)の形式全合成も行なった。
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