研究概要 |
平成11年度は平成10年度から引き続き生理活性化合物の全合成研究を行った。 Macrosphelide A(1)は細胞接着阻害作用を有することから癌転移阻害活性を示す16員環トリエステル構造を有するマクロライド系抗生物質である。1の不斉合成にあたっては2分子の(4R)-benzyloxy-(5S)-hydroxy-2(E)-hexenoate(2)と(3S)-hydroxybutanoate(3)を順次縮合させ、最後にマクロラクトン化で可能と考えられる。すなわち、市販のソルビン酸エステル(4)から得られるラセミの(4,5)-epoxy-2(E)-hexenoate(5)のルイス酸触媒存在下benzyl alcoholとの反応によって得られるラセミの2をアセチル化して相当するラセミのアセテート6を得た。ラセミの6のリパーゼを用いた不斉加水分解で高光学純度の(4S,5R)-2と(4R,5S)-6を得た。(4R,5S)-6は加水分解して(4R,5S)-2へ導き、(4R,5S)-2のエステル基をトリクロルエチル基に変換後、ニ量化してジエステル(7)に導き、次いで(3S)-3との反応によりtriester(8)を得た。8のトリクロルエチル基を脱保護してセコ酸(9)へ導き、山口法によるマクロラクトン化で16員環を形成させ、最後にm-xylene/AlCl_3系で脱ベンジル化してmacrosphelide A(1)を合成した。本年度は更に酸素反応を基盤としてvitamin E(10)の全合成も行った。
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