研究概要 |
α,α-二置換アミノ酸は種々の生理活性天然物中に見いだされる基本構成単位である。これらの骨格を光学活性体として効率的に合成できれば新規医薬品の開発においても有用な手段となりうると考えられる。そこで今回マロン酸誘導体に酵素を応用し、免疫抑制作用を有するミリオシン類の一般的なキラル合成法の開発を検討した。まず予備実験として、α,α-二置換マロン酸モノエステルを光学活性体として合成すべく、これまでに当研究室で行ってきた芳香環と縮合したシクロへキセニルジマロネートにPLE(加水分解酵素)を作用させたところ、期待したように反応は進行しハーフエステルが高い光学純度で得られてきた。本化合物は、さらに数工程を経てフラノテルペン類の重要な合成中間体へと変換できた。これらの事実を基盤とし、次に2-シクロへキセニルジマロネートにPLEを作用させたところ、やはり反応は進行するものの得られたハーフエステルの光学純度は約60%と満足の出来るものではなかった。エステルの種類を種々検討したが、光学純度に関しては改良することはできなかった。そこで得られたハーフエステルをCurtius反応に付し、さらに二重結合を酸化開裂したところミリオシン類の基本構成単位であるα,α-二置換アミノ酸を合成することができた。しかしながら、この化合物は天然物とは逆の立体化学を有していることもX線結晶解析の結果より判明した。現在光学純度の改良、さらに絶対配置の反転を検討中である。
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