研究概要 |
α,α-二置換アミノ酸は種々の生理活性天然物中に見いだされる基本構成単位である。これらの骨格を任意の光学活性体として効率的に合成する方法が確立できれば天然物合成のみならず、新規医薬品の開発においても有用な手段を提供するものと考えられる。昨年度の本研究費においてはシクロヘキセン環を有するマロン酸誘導体に酵素を応用し、免疫抑制作用を有するミリオシン類の一般的なキラル合成法の開発を検討した。しかしながら、得られた化合物は天然物とは逆の立体化学を有していることが判明した。今年度の研究費においては酵素反応のさらなる応用として、海産アルカロイドであり顕著な抗がん作用を有するエクテナサイジン743のテトラヒドロイソキノリン部の簡易合成法の確立を検討した。まずホモベラトリルアミンとケトマロン酸ジエチルエステルを縮合し、生成したマロン酸誘導体にPLEを作用させたが、目的とした化合物である光学活性ハーフエステルは得られなかった。そこで、水素化アルミニウムリチウムにより還元し、ジオールとした後ビニルアセテート存在下種々の条件下、リパーゼを用いエステル化を試みたところ、最高60%eeでモノアセトキシ体が生成した。本反応はリパーゼを用いているにも拘わらず条件によっては全くのラセミ体が生成することもあり、現在さらなるeeの向上およびジエステルの酵素による選択的加水分解の条件検討を検討中である。
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