研究概要 |
α,α-二置換アミノ酸を構成単位とする生理活性化合物合成の検討において、昨年度から続けている、海産アルカロイドであり顕著な抗がん活性を有するエクテイナサイジン743のテトラヒドロイソキノリン部の不斉合成をさらに詳細に検討した。1位にビスヒドロキシメチル基を有する1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン誘導体にビニルアセテートや他のアシル基交換試薬を用い、またリパーゼを不斉反応剤として不斉アシル化を種々の条件下で検討したが、目的とする化合物は得られなかった。また、原料イソキノリンの窒素置換基についてもアシル基やアルキル基等再三の検討を加えたにもかかわらず、これらの反応も満足する結果を与えるには至っていない。 一方、アルツハイマー病の治療薬として期待されているラクタシスチンの合成をセリンを原料に用いて光学活性体として行うことも検討した。この合成計画においてはテトラミン酸の立体選択的還元反応を鍵反応とする予定であり、セリンの不斉源を利用することによりラクタシスチン合成に必要な全ての立体化学を望むべき方向に制御使用とするものである。現在、テトラミン酸の合成までを確立しており、今後すべての官能基の導入などを検討する予定である。
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