研究概要 |
α,α-二置換アミノ酸は種々の生理活性天然物中に見出される基本構成単位であり冬虫夏草より単離された免疫抑制作用を有するミリオシン類や抗痴呆薬としての期待が高まっているラクタシスチンなど、α,α-二置換アミノ酸を構成単位として含む生理活性化合物は枚挙にいとまがない。しかしながらこれらの化合物は天然物として単離されたものであり、光学的にはただ一つの対掌体として存在しているため、両対掌体間における薬理作用の比較はなされていない。したがって、これら化合物の両対掌体を光学活性体として効率良く合成する方法が確立されれば、当然種々の誘導体の合成も可能になり、作用機序の解明を踏まえて、天然物より優れた医薬品の開発も可能になると思われる。このような化合物はその顕著な薬理作用のみでなく、構造化学的にも非常に興味のあるものであり、合成化学的にも重要な位置を占めている。今回の本研究費においては上述した化合物の両対掌体の合成を可能にする新規合成法の確立を目的とし、主に酵素反応を鍵反応として活用した。予備実験としてPLE(pig liver esterase)を用いた不斉加水分解反応を検討し、抗がん作用などを有するフラノセスキテルペン合成の鍵中間体の効率的合成法を確立することが出来た。また、この反応をシクロヘキセン環をα位に有するマロン酸誘導体に応用したところ酵素はsp2炭素とsp3炭素の違いだけを見極めることも可能という事実も明らかとなった。ここで得られた化合物はさらに化学変換を行い、その結果ミリオシン類の基本骨格の簡易不斉合成法の確立に成功した。
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