研究概要 |
近年、海洋生物から種々の含窒素縮合多環芳香族化合物が単離されている。plakinidine A-Cは文献上未知のpyrrolo[2,3,4-kl]acridine骨格を含むアルカロイドで、細胞毒性、駆虫作用、及び逆転写酵素阻害活性を示す興味ある化合物である。本研究では、新規骨格であるpyrrolo[2,3,4-kl]acridine(1)、及び骨格に1を含むbenzo[b]pyrrolo[4,3,2-de][1,10]phenanthroline(2)及びそれらの誘導体の効率的な合成法を確立してplakinidine A-Cの全合成を行い、新しい生理活性物質を創製することを目的とした。なお、溶媒留去などの実験操作は真空ポンプを使用して行い、排水中への有機溶媒の混入を防ぐことができた。 1. m-bromonitrobenzeneとo-aminoacetophenoneから得た2-acetyl-3'-nitrodiphenylamineを酸性条件下で加熱すると目的とする1-nitro-9-methylacridine(3)と、3-nitro-9-methylacridine(4)を生成した。副生成物(4)はジオキサン中二酸化セレンで3-nitro-9-formylacridineに酸化されたが、3は同条件でアルデヒドに酸化されなかった。反応条件を検討して3を1-nitro-9-formylacridineに変換し、ニトロ基の還元、閉環を行い、1を合成する予定である。 2. 1.と同様の反応で4-nitro-9-methylacridine(5)を合成した。5のニトロ基をアミノ基に還元し、オルトギ酸メチル中でメルドラム酸と反応させ、5-[[(9-methylacridin-4-yl)amino]methylidene]-2,2-dimethyl-1,3-dioxane-4,6-dione(6)を収率よく得ることができた。6のニトロ化を収率よく行う方法を検討中である。更に3工程の反応でplakinidine Cの骨格であるbenzo[b]pyrrolo[4,3,2-de][1,10]phenanthrolin-8(11H)-oneを合成する計画である。
|