研究概要 |
海洋生物由来生物活性天然物エクチナサイジンの全合成経路の開発にあたり、前年度に得られた実験結果に基づいてさらに研究を展開し、以下に示す研究成果を得た。 1 イソプロピル基をフェノール性水酸基の保護基として用いる方法論の導入によりエクチナサイジンのA環部置換式を保持したベンズアルデヒド誘導体の大量合成経路を開発した。 2 上記ベンズアルデヒドから ABC環境モデル化合物への変換経路を開発した(15工程:総収率27%)。本経路はすべての段階で唯一の生成物を与えるため、カラム分離操作を必要としない実用的経路である。 3 今までの研究からA環及びC環の置換様式を保持したベンズアルデヒドの大量入手が可能となった。そこで、それらを用いてエクチナサイジン合成中間体を構築した(未発表)。現在、天然物の全合成を目指してさらに研究を展開している。 4 カリブ海に生息する本系天然物の起源海洋生物であるホヤの採集は非常に困難である。最近、タイ国研究者の協力により、プーケット島沿岸で同種のホヤを採集することに成功した。現在、二次代謝産物の検索研究を展開しており、その中から新たな合成標的化合物を見い出していきたいと考えている。 5 昨年、米国ハーバード大学Corey教授によりエクチナサイジンをリード化合物とする新規制癌剤のデザインに関する研究成果が発表された(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1999,96,3496-3501)。ここに見い出されたフタラサイジンは我々の研究対象としてきたサフラマイシン骨格を有している。そこで、コンピューターによる薬物作用部位の解析研究の専門家であるHill博士(パシフィック大学薬学部)とサフラマイシン系天然物を用いた研究を展開した(未発表)。
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