研究概要 |
ドラスタチン15は、1989年インド洋産タツナミガイより単離・構造決定された抗腫瘍性Depsipeptideで、Nメチルアミノ酸を含むペプチド部とピロリドン環を有する非ペプチド部からなっている。タツナミガイからはこのほかにも多くの抗腫瘍性化合物が単離・構造決定されているが、ドラスタチン15はその中でもドラスタチン10と並んで最も抗腫瘍活性が高い化合物であり、臨床での利用が検討されつつある化合物である。本研究では、α,α-ジアルキルアミノ酸と同様に縮合困難とされるNメチルアミノ酸の効率的縮合へのCIP試薬の適用を検討し、本縮合剤を用いるドラスタチン15の効率的合成ならびに構造活性相関研究を行うことを目的とした。 平成11年度には前年度で確立した固相上縮合反応を用いるドラスタチン15の量産法を確立し、構造活性相関研究への応用について検討した。 量産法の確立:全体をペプチド部と非ペプチド部の2つに大きく分け、両者をラセミ化の危険のないPro残基間でCIP試薬を用いて縮合する合成経路を採用した。ペプチド部の合成には前年度で確立したNメチルアミノ酸の固相担体上での縮合を応用した。クロロトリチル樹脂担体にドラスタチン15ペプチド部の各構成アミノ酸をCIP法により順次縮合させ、最後に、酢酸で樹脂からのペプチド鎖の切断を行うことにより、反応中間体を単離・精製することなく容易に目的化合物を得ることができた。 非ペプチド部のピロリドン骨格は、PheとC2ユニットの縮合により形成させた。C2ユニットとしてはMeldrumエステルを利用した。さらに、Hivaのエステル化反応にもCIP試薬を応用し、すべての活性化反応をCIP試薬を用いて行った。 最後に、両成分の縮合をCIP/HOAt法により行い、ドラスタチン15を得た。この一段階縮合反応は、ドラスタチン15の構造決定を行ったPettitらが当初試みた合成経路であるが、縮合効率が上がらなかったため断念した方法である。 構造活性相関:各構成アミノ酸の疎水性、親水性のバランスを考慮しつつアミノ酸の置換を行うため、固相上縮合反応における反応ユニットの置換を行って誘導体の合成を行った。
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