(1) 細胞レベルでのフェロモン受容細胞の解析 神経細胞の一種であるフェロモン受容細胞は、フェロモン情報を電気的信号に変換することにより中枢に情報を伝える。ラット鋤鼻器感覚上皮より調製した膜標品をGTPγSで刺激したところ、IP_3が産生したことから、IP_3合成酵素が存在することを確認した。さらに、フェロモンが含まれている尿標品を与えたところ、濃度依存的にIP_3が産生した。また、IP_3の産生は、GiおよびGiをADPリボシル化する百日咳毒素で抑制された。これらの結果から、尿フェロモンはGiあるいはGoを介してIP3各成酵素を活性化し、IP_3の産生を引き起こすことが示唆された。 (2) 受容細胞におけるフェロモン選択性の解析 感覚上皮には、異なるタイプのG蛋白質およびG蛋白質共役型受容体が層構造をもって分布していることが報告されている。そこで、異なる種類のフェロモンを様々な層に存在するフェロモン受容細胞に投与して、フェロモン受容の選択性を解析した。その結果、ウィスター系オスラット尿は、感覚上皮上部に存在するGi陽性細胞に、ウィスター系メスラットおよびドンリュー系オスラット尿は感覚上皮下部に存在するの陽性細胞に応答を引き起こした。この結果は、フェロモンが異なるG蛋白質を有する感覚細胞で選択的に受容されていることを示唆した。
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