研究概要 |
触媒抗体7C8は,単なる四面体型中間体の安定化以外の因子が重要であることが指摘されている.今回,中性〜酸性領域における反応速度のpH依存性を調べたところ,pH4.5付近に変曲点があることが明らかとなった.そこで,7C8の触媒反応進行要因を探るため,NMRにより7C8の反応部位のミクロ環境の解析を行った.エステル中心の炭素を^<13>Cで標識した反応基質を作成し,7C8結合時における^<13>C化学シフトのpH滴定実験を行った.その結果,pKaが4.6を有する解離性アミノ酸残基が,反応部位に影響を与えていることが明らかとなった.一方,各種アミノ酸選択的安定同位体(^<15>N,^<13>C)標識7C8アナログを用いた解析により,pKaが4〜5を有するアミノ酸はHis92(L)であると考えられた.これらの事実は,抗体7C8による触媒反応がTyr95(H)とHis92(L)の解離性アミノ酸残基の相乗的な作用により推進されている事を意味する.現在,これらのアミノ酸残基が関与した反応機構を明らかにするため,反応中間体のリアルタイム検出を行っている. さらに昨年度までに研究が進んでいる,触媒抗体6D9,および本年度研究を行った触媒抗体7C8の触媒機能の改変,および両者の特長を生かしたハイブリッド型触媒抗体の作成を目指し,大腸菌によるFv発現系の構築を行った.通常,単鎖Fvの安定性が悪いことを考慮し,可変領域ドメインV_H,V_Lを遺伝子上にタンデムに載せ,それぞれ独立にペリプラズムに発現するように計画した.現在,6D9-Fvについては可溶画分における発現を確認した.
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