研究概要 |
今年度は、特に、生理条件下での測定を可能とするヒスタミン電極の開発研究を中心に進めた。私達は、この目的を達成するために、電極材料として種々のリン酸エステル及びチオリン酸エステルを用いて検討した。その効果は、例えば、リン酸エステルの場合には「リン酸エステルのP=O基の負電荷に分極した酸素原子」と「ヒスタミンに含まれるNH_3+基」との強い相互作用を利用している。その結果、私達は農薬として知られているプロチオホス(ジチオリン酸O-(2,4-ジクロロフェニル)O-エチルS-プロピル)がヒスタミン電極の膜溶媒として優れた効果を示すことを見いだした。プロチオホス類似の化合物、プロチオホスオキソン(モノチオリン酸O-(2,4-ジクロロフェニル)O-エチルO-プロピル)及びECP(モノチオリン酸O-(2,4-ジクロロフェニル)O,O-ジエチル)を用いた検討から、ヒスタミン電極の作製にはチオリン酸エステルがもつP=S基が特に重要であることが明らかとなった。私達は、プロチオホスを用いて作製した電極を肥満細胞からのヒスタミン遊難測定に応用した。その結果、電極法では、ヒスタミン遊難過程をその場で視覚化して捉えることができ、ヒスタミン濃度を極めて簡便に定量できることが示された。 その他、イオン電極法がもつ簡便性を多くの生理活性物質の定量に展開させるために、細菌及び真核細胞膜モデルとなるリポソーム膜小胞中に、それぞれセシウムイオン及びカリウムイオンを封入し、生理活性物質により引き起こされる膜透過の選択性をセシウム電極及びカリウム電極を用いて定量することも試みた。また、ホスホリル基を含む有機リン化合物が鉛イオンに対するイオノフォアになることを見いだした。
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