研究概要 |
ロフィン誘導体が強い蛍光と化学発光を示すことに注目し,これらのアリールボロン酸誘導体4種類を新規に合成した.フェノール部位を有するロフィン誘導体はペルオキシダーゼ(HRP)/ルミノール/過酸化水素系化学発光を増強することから,このフェノール部位をフェニルボロン酸に置換した誘導体はより安定な化学発光を与えることが期待された.そこでこの発光系における上記誘導体の影響を調べたところ,4-[4,5-di(2-pyridyl)-1H-imidazol-2-yl]phenyl boronic acid(DPPA)が最大の増強効果を示し,その60分間の発光量は一般的な増強剤である4-ヨードフェノールによるものと同程度であり,かつ極めて安定な発光を与えた.DPPAを用いてHRP0.1ngを良好に写真検出できた.また,ウエスタンプロット法による抗体検出に関して従来の発色法との比較を行い,少なくとも化学発光-写真検出法で64倍以上の感度を得た.次に,ジオール類の蛍光プローブおよび蛍光標識試薬への適用を目的として,各誘導体の蛍光特性を調べた.その結果,4-(4,5-diphenyl-1H-imidazol-2-yl)phenylboronic acid(DPA)が最大の蛍光を示し,その強度はロフィン以上であった.DPAのジオール類との反応性を調べたところ,数種の化合物との反応がTLCにより推定されたが,反応後の大きな蛍光スペクトル変化は観測されなかった.従って,本研究によりDPAの蛍光標識試薬としての有用性は示唆されたが,蛍光プローブとしての可能性に関しては蛍光観測条件等の更に詳細な検討が必要であると考えられた.
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