研究概要 |
非ウイルス系遺伝子治療用キャリアーとして、リポソームやイオン性ポリマーの開発が進んでいる。本研究ではペプチドとリポソームを組み合わせた製剤の開発、遺伝物質の凍結乾燥製剤の開発のための検討を行った。塩基性polypeptide(lysine, ornithine, arginine)の導入効率を向上させるために、3級アミンコレステロール誘導体を主成分とするliposomeを用いた。更に、枝分かれした構造を持つdendritic-peptideを合成し、リポソーム存在下での遺伝子導入効率の検討を行った。評価系としてHeLaS3細胞へのpSV2CAT及びpGL3の導入に伴うCAT及びルシフェラーゼ活性発現を指標とした。8本の枝分かれ側鎖をもつリジン残基から構成されるdendritic-peptideを併用することにより遺伝子発現量は、リポソーム単独時に比べ2-3倍増加した。側鎖の長さが発現量に影響し、リジン残基数12個の側鎖のものより3個からなるpeptideにおいて発現量は増加した。一方、4本の枝分かれ側鎖を持つペプチドでは、残基数3個に比べ9個の方が発現量は増加した。枝分かれペプチドの至適濃度は、poly-L-lysineに比べ低濃度側にシフトしたが、遺伝子発現量には際立った違いは認められなかった。ポリアミノ酸系キャリアーと含有プラスミドDNA複合体による細胞へのトランスフェクションは、10の8乗オーダー(ルシフェラーゼ活性)の高い発現を示す.この複合体液を凍結乾燥し再分散すると1/100近く遺伝子発現量は減少した。糖添加により凍結乾燥前の発現活性を示した。効果はシュクロース、トレハロースで大きいことが判った。凍結乾燥時における、糖の添加効果は、凍結時の複合体の分散を助けること、またDNA表面の不凍水により結晶が引き起こすDNA分子の切断、変性を防ぐこと、乾燥時、残存水分子が脱水によるDNAの変性、DNA分子同士の不可逆的接着を抑えることにあると思われる。本研究は、ポリマー間で形成される複合体の凍結乾燥による変化を分散状態の変質と共に、遺伝子発現という生物活性の面から凍結乾燥製剤の特性を調べた.
|