研究概要 |
1.5配位ニトロシルヘム錯体Fe(TMP)NOのESRスペクトルを種々の有機溶媒中広い温度範囲(10〜400K)で測定した。ただし、TMP=テトラメシチルポルフィリンである。 2.ESRスペクトルは,低温域(10〜100K)における斜方対称型(g_1≠g_2≠g_3)から、中間温度域(120〜200K)における軸対称型(g_1=g_2≠g_3)を経て、高温域(220〜380K)における等方型(g_1=g_2=g_3)へと大きな温度変化を示した。 3.^<57>Feによる超微細分裂定数(10^<-4>cm^<-1>を単位とする)は、斜方対称型スペクトルから|A_1|=11.3,|A_2|=9.5,|A_3|=6.6が、軸対称型スペクトルから|A_⊥|=9.5が、また、等方型スペクトルからは|α_0|=5.2がそれぞれ求められた。分裂定数の符号はA_3はプラスであり、他はマイナスであることが推定された。 4.錯体分子全体の回転運動(R_1)とNO軸配位子の分子内回転運動(R_2)の両者を考慮したStochastic Liouville法によるスペクトルシミュレーションから,運動状態についての定性的な理解が得られた。 5.高温域ではR_1とR_2がともに速い。温度が下降するにしたがい,R_1は遅くなり,200K付近で凍結する。R_2は,NO軸配位子の分子軸のまわりの90°ジャンプであり,120K付近で遅くなるが,40Kぐらいまでは認められる。40〜120Kにおけるスペクトルは斜方対称型であるが,(g_1+g_2)/2付近にNO軸配位子の90°ジャンプを特徴づける吸収が観測される。
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