研究概要 |
最近、Freidrich疾患では完全なプリン・ピリミジンからなるトリプレットリピート配列(GAA)n・(TTC)nの伸長が起こっていることが報告され,このリピートの伸長の機構として三重鎖の関与が示唆されているが,その証拠はない。このリピートの伸長の機構を明らかにするために、本年度の研究では、1)種々のトリプレットリピート配列をもつ単鎖の自己スタッキングの可能性の有無とその安定性,二価金属イオンの影響などを明かにする。2)リピート配列に特有の多形の問題やその高次構造によるクロマチン形成への影響などを明かにすることを目標とした。 (1) オリゴ単鎖と三重鎖DNAの熱力学的および速度的諸量の測定:トリプレットレピートのすべての配列(10組),5'-GATCC(XYZ)_8G-3'および5'-GATCC(z'y'X')_8G-3'を合成し,現在CD-melting法による熱安定度の測定を行っている。ここで、XYZとz'y'x'は相補的な関係にある。準備的な結果ではあるが,(CCG)n,(GAA)nおよび(GGA)nリピート配列は安定なヘアピンまたはスタッキング構造をとっていることが分かった。長さの異なるプリン単鎖5'-GATCC-(GAA)_8G-3'または5'-GATCC(GAA)_4G-3'とその相補鎖からなる二重鎖に対するピリミジン鎖C(TTC)_3Tの三重鎖形成能およびその安定性についてCDスペクトルより検討中である。 (2) ヌクレオソーム形成に及ぼす影響:比較的短いトリプレットリピートを酵母ミニ染色体にクローニングして,そのクロマチン構造を解析した結果,(CTG)_<12>はその近傍にヌクレオソームの形成を促進するが,(CCG)_<12>配列はその近傍からこれを排除することが明かとなった。現在リピートの長いものについて検討中である。
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