研究概要 |
1.分子間三重鎖DNAの形成とその安定性に及ぼす化学修飾の効果 分子間三重鎖の安定性に及ぼす因子として,pH,温度,ミスマッチ配列,化学修飾,イオンあるいはイオン濃度など,さまざまな要因が調べられてきた。しかし,三重鎖DNAの形成機構には多くの課題が残されている。われわれは,融解温度測定に加えて,滴定型熱測定法およびプラズモン共鳴法を用いて,三重鎖形成における熱力学的および速度論的パラメータを測定し,三重鎖DNAの安定性およぼすDNA配列および化学修飾の効果を系統的に解析,評価した。三重鎖DNAの熱力学的ならびに速度論的性質に及ぼす化学修飾の効果を恒温滴定型熱測定計および表面プラズモン共鳴法を用いて検討した。単鎖deoxyuracil,RNA,2^'-O-methyl RNAから形成される三重鎖はほぼ同じ熱力学的および速度論的性質を示した。これに対して,骨格のリン酸基をホスフォチオエイトに化学修飾したオリゴマーからの三重鎖の安定度は,他のものに比べて1/10に減少することを示した。これらの結果は,塩基または糖部位の修飾よりも骨格リン酸基部位の修飾が三重鎖の形成に大きな影響を与えることを示している。 2.特異なDNA配列がクロマチン構造に及ぼす影響 特異なDNA配列が高次構造を形成することしばしばある。いわゆる非B型DNAを形成する一群の配列がある。これらの特異配列が真核細胞のゲノムに頻繁に出現するにもかかわらず,その生物学的役割についてはほとんど明らかでない。そこで,われわれは酵母のミニ染色体を用いたヌクレソームのin vivo assay系を構築し,ヌクレオソーム構造に及ぼす配列の効果を調べた。三重鎖形成配列であるpoly dA,Z-DNA形成配列は完全にヌクレオソームを破壊すること,三重鎖形成配列であるポリプリン/ポリピリミジン配列はこれを破壊はしないが,不安定化することを示すことができた。さらに,この系を持ちいて神経性疾患に見られるでトリプレットリピート(CTG)nや(CGG)n配列のクロマチン構造を解析した。前者はヌクレオソーム構造になんら影響を与えないが,後者はこれを破壊した。
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